地元岐阜県の日本300名山三方岩岳(1,736m)。
世界遺産白川郷に向かい合う位置にそびえ、山頂直下に「飛騨岩」「越中岩」「加賀岩」と三方に巨岩をそびえさせているのがその名の由来。
かつて白山信仰の拠点ともなったようで、加賀岩の岩屋からは13世紀の中国製の小瓶(青白磁の水注)が見つかっている。
ずっと「秋の一番いい日に行こう」と大切に残してあったこの山から、白山に続く野谷荘司山(ノダニジョウジヤマ:1,797.3m)、妙法山(1,775.6m)まで、修験者ルートをたどってきました(ロ。ロ)/
白山スーパー林道で三方岩岳駐車場まで上がってしまえば、山頂まで遊歩道で約50分。
8時に林道のゲートが開き、観光客が押し寄せる9時半前までに山頂に立ってしまおうと、6時15分、熊鈴を付け馬狩料金所脇から登山開始。
白川郷の背後にあたる猿ケ馬場山から昇る朝陽に輝くブナ林。
どの木も根が大きく曲がって、冬の豪雪を物語っている。
ブナ林を抜け、高度をあげると、猿ケ馬場山と人形山の稜線の向こうに、飛騨山脈がくっきり。
槍と穂高の稜線、がんばって登ったよなあ。。
御嶽の噴煙も確認することができた。(しばし黙祷)
と、小ピークの手前で、腰以上の笹藪がガサガサっと揺れる。
気が付けば、あたりはものすごい獣のにおい。
糞も見かけたし、たぶん、熊だ。
(熊鈴をちぎれるほど鳴らし、しばらく状況を確認後、息を殺して登山継続。)
小ピークを越すと、三方岩岳の雄姿が眼前に。
恐怖の後だけに、染みるなあ。。
飛騨岩を巻き、湿っぽいくぼ地をよじ登ると山頂に出る。
そこはまさしく白山の遙拝場。
新雪を薄くまとった白山は、心に祈りをもたらす。
白山スーパー林道の向こうには、笈ケ岳、大笠山、奈良岳、大門山。
笈ケ岳、ここから見てれば、すぐに登れそうだけど、残雪期苦労して登ったっけねえ。。
ずっと眺めていたいけど、観光客と会うのは切ないので、山頂を後に。
野谷荘司山への稜線はアップダウンも少なく、快適な縦走路。
野谷荘司山というのは人の名のようで、珍名の山ハンターとしては気になるところ。
「野谷集落の源頭の山を意味し、荘司は純白の意があり、春遅くまで雪を残し、白く美しく輝く山であることから、名付けられたとされる」らしい。
(ただし、「荘司」は、一般には荘園の管理人(荘官)をさし、純白とする根拠は調べても見出せなかった。)
野谷荘司山から妙法山まではコースタイムで片道2時間。
もうせん平までは楽しい縦走路だけど、その先はアップダウンが多くなり、樹林に視界も遮られがち。
修行僧の気分でもくもく進む。
ほぼ、正午に、妙法山山頂に到着。
この先に白山まで続く念仏尾根は、越中や加賀の修験者が通った道。
いつか、これら白山を巡るクラシックルートを縦走したいもの。
野谷荘司山まで引き返し、鶴平新道から下山。
このルートは、山麓の大窪の集落で民宿を営んでいた大杉鶴平さんが独力で拓かれたもの。
鶴平さんは、白山北縦走路を再興され、「白山の主」とも呼ばれていたそう。
野谷荘司山の東側は崩落が激しいため、新道の上部はなかなかスリリング。
途中からは、ブナ林のふかふかの道になって気持ちよく駆け下りることができた。
新道の入口の大杉の下には、ま新しい石の墓がぽつり。
これが鶴平さんの墓で、死後も道を護っておられるよう。
―なんて、しみじみしていたら、腰に籠を吊るしたおじさんが、話しかけてこられた。
実は、この方、鶴平さんの息子さんで、「『新道』なんて、親父が名付けたわけじゃない、『岳人』が勝手に付けたんだ」などと教えてくださる。
世界遺産になってから、白川郷は何が何だか分からない存在になっちゃったけど、少し離れれば飛騨の魂は、確かに今もあると感じた次第デ゙シタ。
<登山記録>
2014年10月18日(土) 快晴 単独行
―白川郷I.C.―鶴平新道入口(MTB駐輪)―馬狩料金所(駐車)6:20 …三方岩岳9:00〜:20 …野谷荘司山10:20 …妙法山12:00〜12:25 …野谷荘司山13:55 …鶴平新道分岐14:05 … 鶴平新道入口15:35 ―(MTB)― 馬狩料金所15:45―平瀬温泉―白鳥I.C.―(帰路)
<メモ>
・単独・軽装・快晴+下山道をMTBでつないだので、相当ハイペースで登ることができた。
・通常だと11時間程度の行程で、紅葉の時期であれば早朝発でも日没を覚悟した準備が必要。
・馬狩からのルートは熊は必ずいると覚悟して準備を。熊鈴必携で、突然出会わないよう注意して。
・白山スーパー林道利用なら、三方岩岳駐車場から三方岩岳まで約50分の楽々コース。
三方岩岳は三角点がない。
・三方岩岳〜野谷荘司山までは快適な縦走路で人も多い。
・野谷荘司山〜妙法山までも道はしっかりしているが、長丁場ゆえ人は極端に少なくなる。
途中のもうせん平あたりも、獣のにおいがしっかり残っていた。
・鶴平新道は上部の崩落地の通過を慎重に。