栂海小屋の外に出ると、夜明け前の空は、不思議な輝きに包まれている。
間近に雨飾山。そして、遠く高妻・乙妻山に戸隠連山(画像)。
さあて、腹を据えて、標高1,593mから海抜0mまで歩きはじめよう。
先行の登山記録を拝見すると、この先は暑いとか大変といった漠然とした記載が多い。
しかし、日本4,000山を巡る以上、すべての山に敬意をもって歩きたい。
実際下ってみると、やっぱり「大変」が先に立つ。
栂海小屋のある犬ヶ岳(1,593m)から白鳥小屋のある白鳥岳(1,286.9m)の間に、
黄連山、菊石山、下駒ヶ岳など、200〜300mのアップダウンが5つくらい。
目を楽しませる花はなく、風も絶えて、灌木しかない尾根道は照りつけられる。
わずかの慰めは、遠く顔を出した剱岳。
ここでYaさんがラジオを取り出したら、ちょうどなでしこジャパンの決勝戦。
PK戦そして優勝! なでしこたちの頑張りに、がぜん奮起。
へたり顔で休憩する登山者に会うたびに、なでしこジャパンの試合を実況する、Yaさん。
みんな、おお! と元気になっていた。
(こんな山奥まで元気をくれるなんて、スポーツの力ってすごいなあ。。)
ぼろぼろになりながら、白鳥小屋に到着。
山頂は、爽やかな風が絶え間なく吹き。熱射病手前の体が、冷やされる。
そして振り返ると、朝日岳からの長大な、縦走路。
(個人的には、ここまでが最もきつかったデス。)
いよいよ後半。
標高は1,000mを切ったけど、ブナ林に守られている間、体感温度はそんなには上がらない。
最後のシキ割の水場をめざし、セミ鳴く樹林帯をジグザグに降りていく。
ここでも、さわがに会の方が除草作業中。御年73歳とか。とてもそうは見えない。
ぼっちも、70歳を越えて、登山道の整備なんかしていられたらいいなあ。。
最後の水場を過ぎたら、さすがに日本海にたどり着くことだけで頭がいっぱいに。
山姥伝説があるという金時坂を急降下すると、坂田峠。
かつて、海沿いの難所親不知のエスケープルートが通っていた場所だという。
峠まで、林道が来ていて、ここまでタクシーを呼び、最後の2時間半を省くことができる。
でも、やはり自分の脚で海まで行きたいね。
ブナ林は細い2次林となり、一気に体感温度が上昇。
アップダウンを繰り返しながら最後の三角点尻高山に到着。
木陰で一服しながら、ここまでいくつの山を通ったのか地図で確認。(△は三角点あり)
イブリ山、△朝日岳、長栂山、△黒岩山、△サワガニ山、△犬ヶ岳、黄連山、△菊石山、下駒ヶ岳、△白鳥山、△尻高山…さすが縦走、よく稼げたものだなあ。。
天然杉が混じりだし、そのうちに植林帯に。
もう一度林道を横切り、ここも古い二本松峠を過ぎて、登り返すと入道山。
まだまだ登り返しが続き、Gan先輩とYaさんが先に行って、とおっしゃるので、最後をめざし杉林を駈け降りる。
脱走兵のように走る。
国道の騒音が近付いて、ぽんと、親不知観光ホテルの前に出る。
芭蕉と曾良のコンクリート像のそばに愛車奥地君。
よく無事に待っててくれたね。
国道から海岸までの長い階段を下りて、うち出る日本海。
マメのできかけた脚を海に浸し、波に洗われるままにする。
うーん、これかあ。。。
いろんな感謝でいっぱい。
同行いただいたGan先輩、Yaさん、さわがに山岳会の皆さん、家族、そして生きてること自体にも。
「海まではパス」とおっしゃった、Gan先輩とYaさんに日本海の石を土産にして、長い縦走を終えたのでありました。
(おしまい)
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