WALK あばうと 日本4,000山

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お山の勉強室:「『奥美濃』の山」とは、どこの山なのか

岐阜の岳人や、京都の岳人は「奥美濃の山」という言葉を、独特の思い入れを持って使う。

しかし、奥秩父・奥多摩・奥武蔵といった地域と違い、「奥美濃」とはどこなのか、実は非常にあいまい。

ぼっちも、分かったように使いがちだけど、ここで一回おさらいしておいた方がいいのかも。

ということで、今回のお山の勉強室は、「『奥美濃』の山」とはどこの山なのかを、一緒に勉強していきましょう (ロ。ロ)/

 

1.「奥美濃」とはどこか?

 「奥飛騨」については、「岐阜県北部、神通川の支流である高原川流域をいう。高山市北東部(デジタル大辞泉)」と、辞書で明確に特定されている。

 しかし、「奥美濃」は、辞書に見当たらず、わずかに1980年刊行の角川書店「岐阜県地名大辞典」に「郡上郡(※注1) 古代〜現在の郡名・かつては奥美濃と通称した所。」という記述があるくらい。

 ※注1:郡上郡の町村が2004年に合併し、今は郡上市となっている。

 

 この「奥美濃」という言葉が、近年観光や産業振興のための地域ブランドとして広く使われるようになっている。

 しかし、その使われ方は「奥美濃=旧郡上郡(現郡上市)」とは限らず、まちまちとなっている(※注2)

 ※注2:次のとおり、旧郡上郡に限らず、さまざまな地域について「奥美濃」と呼ぶ場合がある。

  奥美濃のスキー場:郡上市を中心とするが、西は揖斐郡あたりまでを含む場合がある。

  奥美濃カレー:郡上市白鳥町(旧郡上郡白鳥村)を中心に販売されているB級グルメ。

  奥美濃古地鶏:郡上郡の地鶏と外国種を掛け合わせ、岐阜県養鶏試験場が開発したもので、岐阜県各地で飼育。

  奥美濃水力発電所:本巣市根尾上大須に所在する揚水発電所。

 

2.山岳書にみる「奥美濃の山」

 次に山岳書では「奥美濃」をどのエリアとしているか、代表的な2書で見てみましょう。

(1)「樹林の山旅(奥美濃紀行)」(1940年(昭和15年)刊 森本次男著)

 「奥美濃の山」を最初に紹介した本で、アルピニズムに背を向け日本の樹林の山に目を向けた最も早い時期の書とも言える。

 京都の岳人森本次男氏は、同書の冒頭で「奥美濃は関西の隠れた山岳地帯である」と定義し、巻末に「奥美濃概念図」という地図を載せている。

  (↓地図クリックで拡大)

 

 概念図には、伊吹山以北、大日岳以南の、岐阜・滋賀・福井県境の山地が含まれ、平地に接する里山は除かれている。

 また、旧郡上郡のうち鷲ヶ岳など県境部ではない飛騨高地の山は除外されている。

 それにしても、美濃国の不破の関から東が関東というのは常識だから、京都岳人森本氏は、よくも「関西の隠れた山岳地帯」なんて言い切ったもの。

 当時は、登山界で未知の山域だったから、言ったが勝ちだったのかな (?_?)

 

(2)「奥美濃―ヤブ山登山のすすめ」(初版1987年、三訂版2007年、高木泰夫著)

 戦後の「奥美濃の山」を紹介した本としては同書が代表的で、三訂版まで出されている。

 著者の故高木氏は、ぼっち地元の山の会の会長を長らくつとめられ、「ぎふ百山」の「奥美濃の山」の多くを執筆、また日本山岳会員として、ぼっちのバイブルあばうと日本4000山を掲載した「新日本山岳誌」の編集にあたられた大先輩であります。

 

 同書では、「北は白山から南西を俯瞰するとき、南は伊吹山から北東を展望するとき、見はるかす彼方まで重畳として(ママ)緑の山並みが続いている。それが奥美濃である。これを水系でたどれば揖斐・長良両川の水源部をいい、山系で追えば近江と美濃を境する伊吹山地、越前と美濃を分ける越美山地およびそれから派生するいくつかの小支脈を含めて奥美濃という。」と定義される。

 この定義だと、「樹林の山旅」における「奥美濃の山」の範囲とほとんど同じに受け取れる。

 高木泰夫氏は、京都岳人にして、岐阜県岳人にも多大な影響を与えた日本山岳会岐阜支部長(その後日本山岳会会長)で岐阜大学学長でもあった今西錦司氏との同行が多いので、現在はこれが多数説かもしれない。

 しかし、同書裏表紙の「『奥美濃』概念図」および本文では、養老山地、鈴鹿山脈の岐阜県部分、越美山地の里山を入れており、一部「定義」と整合性が取れておらず、さらに「樹林の山旅」と異なり、鷲ヶ岳など飛騨高地の旧郡上郡の県境以外の山も含めているなど「『奥美濃』の山」はどこの山なのか、細部では疑問が残る。

(↓地図クリックで拡大)

3.まとめ

 以上のように、「奥美濃」という言葉は流動的で、かつては旧郡上郡をさしていたものの、近年は郡上市を中心に観光や産業振興に、地域を厳密に特定することなく使われる傾向がある。

 それに対し、「『奥美濃』の山」という場合は、旧美濃国の国境部(※注3)奥山をいう場合と、国境部以外の山も含める場合とがあるが、いずれにしても、旧郡上郡の山と限定したものではない。

 ※注3:厳密にいうと、野伏岳など郡上市白鳥町石徹白地区の県境の山は、1958年に同地域が福井県から岐阜県白鳥村に編入されてから岐阜県境となったのであり、旧美濃国の国境の山ではないという、さらにややこしい事情がある。

 つまり、住民や観光客が使う「奥美濃」と、登山者が使う『奥美濃』は、違うものだというのが結論。

 「『岐阜百名山』勝手に選定委員」ぼっちとしては、「岐阜県の誇るすぐれた山を、広く一般にも伝えていく」ことも選定の目的としたいけれど、「広く一般に」という場合、地元の方々や観光客などが主な対象となる。

 その際「『奥美濃』の山」という、住民や観光客と登山者とで、意味合いが乖離した言葉を使うと、混乱を生じてしまう可能性がある。

 そのため、「『岐阜百名山』勝手に選定委員会」の取り組みにおいては、なるべくこの言葉は安易に使わず、例えば、「長良川源流部の山」とか「越美山地県境部の山」といった、概念にブレの少ない言葉に置き換えていくようよう努めたいと、改めて思う次第。

 

| ぼっち | お山の勉強室 | 22:11 | comments(0) | trackbacks(0) | にほんブログ村 アウトドアブログへ←アウトドアブログのランキングです クリックよろしく!









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