WALK あばうと 日本4,000山

「新日本山岳誌」掲載の約4000山が修行の地。 めざせ山仙人!
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根尾西谷川源流部の山(2)―蠅帽子嶺(1,037m)

大菩薩嶺は、大正13年から昭和19年の32年間新聞小説として長期連載された中山介山作「大菩薩峠」が有名だから、日本百名山に入れてもらえたような、峠の方が有名な山。

岐阜県にも同じように、峠の方が有名な山として、蠅帽子峠を西肩に持つ蠅帽子嶺(はいぼうしれい:1,037m)がある。

 

蠅帽子峠は、現在国道157号線が通る温見峠とともに、美濃から越前へと抜ける古くからの峠。

この峠を有名にした事件に、幕末元治元年(1864年)の12月4日、水戸藩を中心とした尊王攘夷派の天狗党が那珂湊の戦いで敗れ、混乱から脱した武田耕雲斎を首領とする千人ほどが、上洛して朝廷へ尊皇攘夷の志を訴えるため、越前に迂回して京に向かうためこの峠を越えたことがある。

峠を越えて越前に入った彼らは、幕府軍の追討にやむなく投降したあと、828名のうち、352名が敦賀で処刑されるという無残な結末を迎える。

挙兵当初、略奪・虐殺などの凶行を働いたこともあり、通過する街道沿いには天狗党に対する恐怖の記憶が長く残されたという。

歴史上、峠が有名な割に、山はまったく無名で、国土地理院の2万5千分の1地形図には、三角点三角点の記号だけで、山名は記されておらず、「ぎふ百山」にも「続ぎふ百山」にも入っていない。

しかし、近年の旧道ブームで一部マニアが訪れたりしていると聞く。

一風変わった名前の由来や、峠にまつわる歴史は、このHPをご参考にしていただくとして(←手抜き)、いざ実登 (ロ。ロ)/オウ

 

蠅帽子嶺の登山口は、国道157号線沿いの本巣市根尾大河原。

かつて峠を控えた宿場としてにぎわった集落は、根尾村が本巣市になるよりも前、1980年頃には廃村となっている。

9月の台風で被害のあった国道157号線は、根尾能郷から先が通行止めとなったまま。

さらに、根尾東谷川から折越林道・猫峠林道を回るルート、黒津林道を回るルートも通行止め。

そのうち猫峠越えは、地図を見る限り、極端な急坂ではないようなので、自力突破を覚悟して、MTBルイガノ号を愛車奥地君に載せていく。

猫峠までは問題なかったので、もしかしたらこのまま大河原に入れるかとの淡い期待もむなしく、大河原まで下る最後の沢が大崩落して通行不能 (ToT)ヤッパリカ

ルイガノ号を肩に負い、崩落地をへつりながら、何とか突破。

20181103がけ崩れ部分.jpg

ようやく大河原橋に出て、根尾西谷川両岸を観察。

村落の跡はまったく残されておらず、右奥に見える尾根が、蠅帽子嶺への取り付き点らしい。

20181103大河原橋.jpg

蠅帽子嶺への尾根に取り付くには、根尾西谷川右岸から、石の地蔵さまがある左岸に渡渉をしなければならないとの事前情報。

川岸への道を適当に見つけ川岸に出ても、地蔵さまのあるような地点は見当たらない。

川岸までびっしり生えた灌木類で移動がひどくわずらわしく、カヌー用のズボンとマリンシューズに換え、らしそうなところでエイヤと渡渉。

渡渉地点20181103.jpg

川岸から斜面に取り付くと、地蔵さまではなく、土に埋もれかけた如意輪観音の石仏があった。

だいたいいいところに出た感じ。

スギ植林の斜面は、台風の影響で倒木が多く、わずかな道の痕跡を慎重にたどる。

20181103如意輪観音.jpg

らちが明かなくなって、エイヤと尾根上まで直登したら、本来の踏み跡が登場。

かつての街道だけあって、取り付き部分の急登を過ぎると尾根道は比較的ゆるやか。

ブナやシロモジなどの二次林に黄葉がはじまっている。

20181103蠅帽子登山道.jpg

踏み跡には、倒木も多く、ところどころ乱れているのをルートファインディングをしながら標高を稼いでいくと、ブナはどんどん立派になり、黄葉はより鮮やかな黄色・金色に染まる。

樹間越しに、どっしりした能郷白山の姿も見えてくる。

20181103蠅帽子登山道2.jpg

尾根道は908mピークと、943mピークの手前でやや急になる。

943mピークには標識があった。

20181103 943m地点.jpg

踏み跡沿いには、イワウチワの群落が多い。

返り咲きの一輪を発見。早春には一面の花が楽しめそう。

20181103蠅帽子イワウチワ.jpg

登山中、蠅帽子嶺の山容をしっかり拝める場所はなかったけれど、二つの頭を持つ台形の山だということはおおよそつかめる。

ピーク直前から、ふたたび急登になる。

20181103蠅帽子嶺.jpg

最後の登りの手前に、右:蠅帽子嶺、左:蠅帽子峠の分岐がある。

20181103蠅帽子分岐.jpg

蠅帽子嶺への最後の登りは灌木につかまりながら急斜面で、踏み跡も薄い。

尾根上に出ると再び踏み跡が明確になり、こじんまりと開けた三等三角点:基準点名「這星」のある山頂に出る。

20181103蠅帽子嶺山頂.jpg

山頂は、南側が刈られ、能郷白山が真正面に拝めた。

その手前に、今しがた登ってきた黄葉の尾根が見下ろせる。

能郷白山は、天保5年(1834年)発行の「細見美濃国絵図」では、「三山」という名になっている。

確かに、蠅帽子側から見ると三つの山の連なりとして見える。

ちなみにこの絵図で、蠅帽子嶺は「這越山」と記される。

20181103能郷白山.jpg

山頂を後に、蠅帽子峠をめざす。

尾根の踏み跡で直接峠に向かおうとしたら、途中で尾根が二つに分かれ、南側を取ったら、山頂下からの峠への巻道に合流してしまった。

荷物をデポして、巻道で峠をめざす。

20181103へつり道.jpg

ようやく尾根の方部分に出て、峠の地蔵さまに対面。「這法師峠 蠅帽子峠 水戸浪士の道 右下越前大野」の標識もある。

天狗党が通った頃は、美濃側の大垣藩と越前側の大野藩が天保13年(1842年)に修復した直後なので、しっかりした道だったし、ここから見える明るくおだやかな山並みは、天狗党の面々に少しは希望の思いを与えたのではないだろうか。

ちなみに地蔵さまは、明治元年に美濃側で据えたものだそう。

20181103蠅帽子峠.jpg

下山は、光を透かす黄葉に身も心も浸されながら下っていく。

新緑もすばらしそうだし、いやあ、掘り出し物の山だなあ。。

尾根の踏み跡をきちんとたどると、尾根の先端の一本杉の所に出る。

ここにも、「乳くれ地蔵」と呼ばれる地蔵さまがあり、台座の碑文を読むと、文化五年(1808年)四月の文字が読める。

すると、天狗党が通った頃にはここいて、千人近い殺気立った人々が山越しする姿を見ておられたことになる。

碑文には、年号に続いて、二人分の戒名が記され、両霊の菩提のために建てたとあるので、峠で行倒れた旅人をとむらったのだろうか。。

ふたたび渡渉して、踏み跡をたどると、国道157号線に出る。

よく見ると、「ハエ帽子峠」というしっかりした標識も立っているではないか。

ただし、この標識温見峠側を向いていて、本巣市側から来ると見えなかったという次第。

20181103蠅帽子入口.jpg

<登山記録> (―:車、〜:自転車、…:徒歩)

2018年11月3日 晴 単独行

自宅3:30―(県道255号線・折越林道・猫峠林道)―林道崩落点(駐車)6:00〜大河原(駐輪)6:40…渡渉点7:00〜7:20…943m点9:20…峠との分岐9:35…蠅帽子嶺山頂10:00〜10:20…蠅帽子峠11:00…分岐11:30…尾根取付きの地蔵さま(渡渉)13:15…大河原13:40〜駐車場所14:00―(帰路)

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<メモ>

・登山の対象として、「ぎふ百山」刊行の頃は全く無名の存在だった。

 その後、根尾村の教育委員会が古道を再整備し、山頂への道も付けられた。

・しかし、その後の維持管理は十分されていないため、踏み跡程度の現状となっている。

・ルートの肝は、尾根先端の「乳くれ地蔵」のある一本杉へと根尾西谷川を渡渉する箇所。

 幅はさほど広くないが、11月の晴天日続きで膝下くらい、流れはそこそこ早い。増水時の登山は中止した方が賢明。

・標識は、国道157号線の入口に出ている。根尾側からでは反対向きになって見えないので注意。

 途中いくつか標識があったが、いずれも数年で朽ち果てそうなものなので、地図をしっかり読んでいきたい。

・山頂は、南側直下が急斜面のため、わずかの刈り払いだったが能郷白山方面の展望がしっかり得られた。

・国道157号線は、豪雪地帯のため半年ほど通行止めとなる。登山適期は開通直後梅雨入り前か、10月〜11月。

 台風での通行止めも頻発するので、直前の道路情報を確認いただきたい。

 

| ぼっち | 「岐阜百名山」勝手に選定委員会 | 06:29 | comments(0) | trackbacks(0) | にほんブログ村 アウトドアブログへ←アウトドアブログのランキングです クリックよろしく!









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