飛騨山脈、いわゆる「北アルプス」に、奥丸山という山があるのをご存知でしょうか?
新穂高温泉の北、鎌田川の右俣谷と左俣谷に挟まれ、槍ヶ岳西鎌尾根の千丈乗越から南に派生する中崎尾根上に位置する標高2,439mの山であります。
下の地図をご覧いただくと、右俣谷を挟んで東に槍ヶ岳から穂高連峰、左俣谷を挟んで西に双六岳から笠ヶ岳と向かい合う、飛騨山脈南部の展望には抜群の位置にあるのを分かっていただけましょう(↓画像クリックで拡大)。
ただし、貴重な夏山シーズンに、それら魅惑の山々ではなく、この地味な山に向かうのは、よほどもの好きかも。
今回、ぼっちの山の会の西鎌尾根経由の槍ヶ岳・穂高連峰登山計画が、台風12号が週末来襲のため中止となり、27日(金)、天気のいいうちにどこか登ろうということで、ようやくこの山に登る機会がやって来た。
メンバーは、フルマラソンを年何度も走るメンバー2名を含む健脚5名組。
奥丸山への代表的なルートは、右俣谷の槍平小屋から直登するもの。
左俣谷にも、2005年にわさび平からのルートが開かれ、さらに槍ヶ岳から西鎌尾根の千丈乗越からの尾根道ルートもある。
今回は新穂高温泉から左俣谷から入山し、右俣谷経由で新穂高温泉に戻る周回コースを選択。
小池新道につながるわさび平小屋は多くの登山者でにぎわっている。
その背後にのぞく、丸みを帯びた地味なピークが奥丸山。
わさび平から約20分で、左手に下丸山(1,852m)がせまってくる。
このあたりが、奥丸山への取り付き点となるはず。
新穂高温泉から続いている左俣林道は、ここでコンクリートの橋で右手に折れ、小池新道は左手に分かれていく。
コンクリートの橋を渡った先が奥丸山の登山口で、左俣林道と別れ下丸山を右手に巻いていく。
最初はわさわさした夏草に覆われ、ヤブ漕ぎなの?と心配したけど、樹林帯に入り込むと、踏み跡はしっかりしている。
標高約1,450mの取り付き点から、約2,100mの尾根に出るまでの急登が、今回の肝(きも)。
シラビソやクロベ、ブナなどの見事な原生林は、江戸時代から伐採の進んだ上高地側では見られない見事なもの。
途中、槍ヶ岳から中崎尾根を下山してきた単独行の男性とすれ違った以外誰とも会わない。
これほどの静けさに包まれた登山道は、飛騨山脈でも希少。
取り付き点から2時間余りで、中崎尾根・わさび平分岐に到着。
多忙でこの夏最初の登山だったというNさんは、熱中症寸前だったけど、ここで大休止して復活。
ちなみに、中崎尾根を南下し、中崎山(1,744m)を経由して新穂高温泉に下りるルートは、ほとんど歩かれていないみたい。
尾根道は、ぐっと穏やかになり、ニッコウキスゲ咲く登山道の向こうには、槍ヶ岳(3,180m)から、大喰岳(3,101m)、中岳(3,084m)、南岳(3,031m)が連なる。
本当は、あの稜線をたどる計画だったんだけどな。。
三等三角点奥丸山の山頂に到着。
槍ヶ岳を背景に記念撮影。
山頂に至ると、北側の展望も広がる。
画像は左手から双六岳、樅沢岳、西鎌尾根から槍ヶ岳、大喰岳、中岳のパノラマ。
双六岳の直下に弓折岳が重なり、南に抜戸岳、笠ヶ岳、錫杖岳が続く。
槍ヶ岳から南へ視線を回すと、南岳から大キレットを挟んで北穂高岳。
特に、日本アルピニズムの先鋭的な舞台となった北穂高岳の滝谷をこれほど間近に眺められる山はほかにない。
笠ヶ岳に立てば笠ヶ岳は見えない。槍ヶ岳に立てば槍ヶ岳は見えない。
360度飛騨山脈南部の主要な山岳を展望できるということにおいて、奥丸山はピカ一かもしれない。
名残惜しい山頂を後にして、約1時間で右俣谷側槍平小屋に到着。
こちらのルートは小屋から近いこともあってか、一か所崩落した痩せ尾根を慎重に通過する以外は、登山道整備もばっちり。
小屋の入口に「<警告>台風12号の接近のため、明日28日(土)の午後以降は、新穂高方面の沢の増水で、ほぼ100%通行不能となります。下山の方は本日27日中おそくとも28日早朝に下山してください」との札が吊るされていた。
無理して日帰りも(アルコールも持ってきてるし)もったいないので、予定通り1泊し、早立ちとする。
実は、本日27日が、ぼっちの誕生日。
Nさんが、ワインをプレゼントしてくれ、みんなで乾杯。
ありがたいことです。
翌28日、朝食を弁当で済ませ、夜明けとともに小屋を出発。
何とか滝谷も、雨の降りだす前に通過できた。
それにしても、滝谷は2012年に来た時と、様相がずいぶん変わって見える。
数年前の台風でかなり荒れ、大水になると土石流が発生する危険が高まっていると小屋の兄さんが言っていた。
温暖化による影響もあるのかもしれないけど、そもそも飛騨山脈はプレートのぶつかり合いの影響下で様相を常に変えている場所なんでしょう。
9:00新穂高温泉に到着。雨に降られなくてよかった。
駐車場から吊り橋を渡ったところにある「深山荘」で汗を流しさっぱり。
槍ヶ岳初登頂をめざすつもりだったメンバーは、言葉少なくなりがち。
でも、山頂からの大展望と飛騨山脈の貴重な原生林を味わえる奥丸山周回は、山馬鹿ぼっちにとっては十分魅惑的でありました。
<登山記録> (―:車、…:徒歩)
2018年7月27日(金)~28日(土)
27日(晴) 東海北陸自動車道ひるがのS.A.(集合)6:15―新穂高温泉(駐車)8:10~8:30…わさび平小屋9:40~9:50…分岐10:15…奥丸山登山口10:20…中崎尾根・わさび平分岐(昼食)12:10~12:30…奥丸山山頂13:40~14:20…槍平小屋15:10(泊)
28日(曇) 槍平小屋5:10…滝谷出合6:00~6:10…白出沢出合7:35…穂高平小屋8:05…新穂高温泉9:00
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