WALK あばうと 日本4,000山

「新日本山岳誌」掲載の約4000山が修行の地。 めざせ山仙人!
冬山の相棒「わかん」

冬の登山用具と言えば、アイゼンやピッケルがまず思い浮かぶかも。

アイゼンやピッケルは、アルプスなど堅く締まった雪や氷を登攀するために開発されてきたもの。

しかし、日本の冬山は、季節風の影響で柔らかい雪が深々と積もる。

そんな条件下ではアイゼンは役に立たず、かわりに大活躍するのが、「わかん」でありマス。

 

わかんは、「輪かんじき」の略で、「かんじき」とは、田とか、雪とか、氷とかの上を歩くための道具の総称。

そのうち、深雪に体が沈まないよう体重を分散させるため輪にしたものが、「輪かんじき」。

西洋の雪上歩行具スノーシューと似ているけれど、雪原歩行に向いたスノーシューに比べ、わかんは斜面に強く、機動力がある。

雪深い山を生活の場としてきた日本で独自に発達してきた道具で、その起源は縄文時代にさかのぼるともいう。

日本の豪雪地帯の山では、アイゼンより、スノーシューより活躍する場が多い冬山の大事な相棒。

それではここで、ぼっちのわかんを初代より今回買った三代目まで一挙ご紹介。

初代のわかんは、木を曲げ、横滑りを滑る木製の爪を挟んで、足を置くブリッジ部分を麻紐を編んで作った古式ゆかしいもの。

靴を固定する紐部分だけ、ナイロン製に金具付きと近代的。

立山登山の基地として有名な富山県の芦峅寺集落などでつくられていた、伝統のわかんを、登山用にアレンジしたものでありマス。

木製の長所は、あたりが柔らかく軽いので、ザックで運びやすいこと。

長年愛用してきたけれど、麻紐が切れてしまい、今は思い出の品として保管。


二代目は、1801山登られて逝かれたHさんの遺愛の品を譲り受けたもの。

輪部分はアルミ製で前後に分かれ、爪部分はステンレス製。

これらのパーツを、アルミの鋲で一体にしてある。

足を置く部分と、靴の固定具(バンド)はナイロン製。

アルミなので比較的軽く、雪離れがいい。

今回霊仙山登山で、左側が長年の使用で鋲が折れ、真っ二つに。

ずいぶん多くの山の雪を踏んだ、二代目も、とうとう現役を引退。


そして今回購入したのが、三代目のわかん。

縄文時代から基本の仕組みは変わらないシンプルな道具ゆえ、二代目と大きな違いはない。

変わったのは、黒くコーティングされていること、やや縦長になったこと、爪がねじ式で交換できること。縦長になったのは、スノーシューの沈みにくい構造を参考に改良したのだとか。

そして、最大の違いがバンド部分。

厳冬期の過酷な条件下で装着しなくてはならないことも多い「わかん」は、バンドの締め方が極力シンプルなこと、途中で緩まないこと、どんな靴でもすぐ合わせられることが大事。

長すぎるバンドを切り詰め、左右・金具に紐を通す順位をマジック・インキで書いてすぐはけるように手を加え、三代目いよいよデビューでありマス。

 

| ぼっち | 山道具・小屋道具 | 21:23 | comments(0) | trackbacks(0) | にほんブログ村 アウトドアブログへ←アウトドアブログのランキングです クリックよろしく!
「スノーダンプ」発達史

最強のスノーダンプを探すうちに、「スノーダンプ」発達の歴史も浮かび上がってきた。
ウィキペディアでは、北海道が起源とされているけど、石川県が起源という説もあったので、両方をご紹介。

〇北海道起源説
北海道開拓記念館によれば、スノーダンプの原型は、昭和20年代(後半とも言われる)、積雪の多い空知地方を中心に旧国鉄保線区の除雪に使われていた木製押し道具だったとされる。
 この器具は、農具の箕(み)に似ていることから「雪箕(ゆきみ)」と呼ばれていた。

⊂赦30年代後半に入り、国鉄や北海道開発局が、鉄工所に鉄製の「雪箕」を注文するようになった。
F韻減◆∪仞邯など雪深い北陸地方でも同じような形の鉄製の「雪箕」が考案され作られるようになった。
ぞ規模で量産基盤のない北海道内の業者に対して、北陸の業者は意匠・商標登録で生産・販売権を獲得し、昭和40年代後半に量産を開始。「スノッパー」「スノーダンプ」の名前で雪国に急速に広がり始める。

イ修慮紂男性の冬季出稼ぎを背景に、女性のために軽いものをと、新潟県の業者が昭和60年(1985年)プラスチック製の「ママさんダンプ」(商標登録は昭和51年に取得)を発売。一気に普及していった。

λ務て擦任蓮屮泪泙気鵐瀬鵐廖廚用具としても用語としても定着した。

→北陸での量産製品こそ、「和田式スノッパー」や「吉鉄スノーダンプ」で、農機具などの販路に乗って、広く流通していったんでしょう。
 さらに遡れば、その流通基盤に、江戸~明治期の北前船による物流経路があったはず。

〇石川県起源説
‥賈鵡業大学沼野夏生教授は、そのルーツが石川県の旧石川郡吉野谷村(現白山市)中宮地区の鉄工所にあるとの説を取られ、同地を訪問している。(沼野教授の著書「雪国学−地域づくりに活かす雪国の知恵」)

⊂駄邏擬の訪問時、既に鉄工所は廃業しており、一緒に試作品を作ったという金沢市内在住の息子さんの話を伺うことができた。
・その鉄工所を営んでいたのは、明治39年生まれの宮村勝さん。宮村さんは、手取川沿いの水力発電所の建設や維持管理に携わる人を相手に、様々な道具の製造や修理を行う野鍛冶をしており、昭和38年の豪雪の頃、尾口発電の雪下ろしのため、除雪作業業者の依頼を受け、それまでの一輪車に代わる除雪・運搬用具を工夫し「スノッパー」と名付けた。
 ヒントとなったのは石炭用の大型スコップで、近場の人に提供を始めたところ、評判が良く注文に生産が追いつかなくなったという。

これに改良を加えて、手広く製造販売を始めたのが、宮村さんの遠縁にあたり、やはり電力会社の建設工事に関わる鉄工が主力のY鉄工所で、沼野教授は存命だったその主人に苦心された改良の経緯を聞くことができた。Y鉄工所の製品は、地域商品として人気を博した。

ぅ好離奪僉爾蓮△笋て小松市の農機具会社が類似品を作り、意匠登録して広く各県に売りさばくようになった。

→の「これに改良を加えて、手広く製造販売を始めたのが、とある鉄工所」というのは、沼野教授は本に明確に書いていないが、旧吉野谷村に接する石川県旧白峰村(現白山市)牛首地区にあった鉄工所で、「白峰スノッパー(またはスノッパ)」という製品と考えられる。
 白山山麓の白峰村は、地理的に隣接する福井県勝山市との関係が深く、白峰の鉄工所の製品を勝山市民は「白峰スノッパー(またはスノッパ)」と呼んで、長く愛用してきた
 その鉄工所は、数年前に廃業されたのだけれども、市の広報紙「広報かつやま」の、「ゆずってください」欄に「白峰スノッパー」が出てくるほど今も愛されている。

→い痢崗松市の農機具会社」というのは、和田農工具なんでしょう。
 ただし、白峰スノッパ―は、地面上での搬出を容易にするよう底の面を丸くして摩擦を減らしているのに対し、和田式スノッパーは、屋根の雪下ろしを容易にするよう底を平らにし、軽量化し、取っ手の角度にも用途に応じた工夫がされているなど、単なる類似品にはとどまっていない。

〇考察
・「北海道起源説」をとるか「北陸起源説」を取るかは、微妙なところ。
・「雪箕」が北海道発祥なのは間違いないけれど、それが「スノッパー」「スノーダンプ」につながったかが、はっきりしない。
・スノッパ―を作った宮村さんが、北海道の「雪箕」を知っていたとの息子さんの証言はない。
 もし知る機会があるとすれば、尾口発電所関係からと思われるが、同発電所は昭和26年以前は日本発送電の管理だったが昭和38年当時は北陸電力が管理しており、北海道の雪箕の情報が入る可能性はあまり高くはないのではとも思われる

<2018年6月追記>

・白峰村は、豪雪の山村で手取川氾濫の被害もあり、明治29年、昭和9年の大水害を契機に北海道に多数移住したという。

 北海道空知郡奈井江町には、白山部落という白峰出身者の集落があるそう(「白峰村からの開拓移住者」参照)。

 したがって、北海道の情報が入る可能性はある。

・なお、白峰村では、「スノッパ」「箕」とも呼んでいる(環白山保護利用管理協会の「あるもの探し」活動の調査による)が、「雪箕」と呼んでいるとの情報は見当たらなかった。
・また、「スノッパー」の語源が、何らかの方言なのか、例えばスコップという言葉のもじりなのかといった情報は把握できなかった。

・「北海道起源説」「石川県起源説」いずれにしても、商売上手な北陸の業者が原型を模倣して権利設定・大量生産して大儲けしたように受け止められかねないけど、その背景に北陸地方で死者が228名も出た38豪雪があり、効率的な除雪道具の大量普及が喫緊であったこと、目的に応じたさまざまな工夫が加えられていることにも目を向けていいのではと思う。

・「スノーダンプ」の呼び名は、地域で異なっており、それは各製品の普及状況に影響されているんでしょう。
 福井・石川県あたりでは「スノッパ(ー)」、新潟・山形県あたりでは「スノーダンプ」、雪質が軽いor量が比較的少なくてプラスチック製が普及している北海道や都市部(金沢市や福井市など)では「ママさんダンプ」が、それぞれ一般的な呼称になっているもよう。

・「スノーダンプ」の普及は、家族が少人数化する中で、雪国の暮らしをずいぶん楽にしてきた。
 時代が変わり、生活が変わると、道具も変わる~道具が変わると、生活も変わる―そんな循環が、スノーダンプを巡る歴史にもあるんだなあ。。

〇余禄
・「スノーダンプ」は、大阪市のダイケンの登録商標。
 昭和38年頃のカタログでは、一輪車と並んでいるので、そこから発想したのでしょう。
 「北海道起源説」「石川県起源説」には出てこないけど、スノーダンプ発達史では見落とせない。
 ただし同社は現在、スノーダンプを作っておらず、同社のHPからは北海道との関わり、スノッパーとの関わり等は分からなかった。

・新潟県に「スノーダンプ」が普及してきたのは、昭和40年代。
 「吉鉄スノーダンプ」は、昭和46年頃から制作されているとの情報があった。

・昭和60年発売の「ママさんダンプ」開発の経緯こちらのインタビューをどうぞ。
 (ただし、インタビューしたテレビ局は、発達史をうまく整理し切れていない感じ。)

注:「北海道起源説」は、このHPを参考にさせてもらいました。
  ありがとうございます。
  

| ぼっち | 山道具・小屋道具 | 23:10 | comments(0) | trackbacks(0) | にほんブログ村 アウトドアブログへ←アウトドアブログのランキングです クリックよろしく!
最強のスノーダンプを探して

豪雪地帯必須の除雪道具、「スノーダンプ」。別名、「ママさんダンプ」。
大坐小屋の屋根の雪下ろしには欠かせないものだけど、最初のプラスチック製が1年で壊れ、
その後、アルミ製・取っ手ビス止めのものを使用してきた。
ところが、今冬の豪雪で相当ガタがきて、うんざりするくらい雪下ろしには時間がかかってしまった。
おかげで、「最強のスノーダンプがほしい」という物欲が、またムラムラ。

頑丈で・軽くて・一度に大量の雪が下ろせて・雪離れが良くて・操作性がいい―それが最強の要件。

2010年「伝説のママさんダンプを探して」長野から豪雪の新潟まで脚を伸ばしても、理想の物には出会えなかった。
そこで今回は、ネット検索を利用。
捜査線上に浮かびあがってきた最強候補は、次のような製品。

・吉鉄製作所(新潟県妙高市)の「吉鉄スノーダンプ」 
 徳本峠小屋でバイトをしていた山仲間Konちゃんによると、山小屋では定評のある逸品とか。
 製造元の吉鉄製作所は、スノーダンプのほか、リヤカーなども作っているらしい。
 
 この製品を、上越市のオギハラ工業という農具メーカーが販売。その商品名が「吉鉄」。
 オギハラ工業自身も個性豊かな農具を製造されている。 
 
吉鉄の大 2005年の豪雪時に、自衛隊が「吉鉄の大」を採用したくらい頑丈な鉄製。
 特に固い雪には威力を発揮しそう。
 ただし、その分重量が、小で6.0kg、大だと7.5kgもあり、屋根の雪下ろし用にはちょっとつらいかも。
 

・和田農工具(石川県小松市)の「和田式スノッパー」 
 和田式スノッパーこれも鉄製で、「小」だと、幅540mm×奥行555mm 重量5.1kg。
 「柄が少し短めで、特に屋根雪処理に最適。底が平らで使いやすく、雪の多い地方ではベストセラー、パワフルで頑丈」とか、「魚沼地区の雪下ろしを冬の生業にしているプロが一番使用する逸品」という売り文句に、くらくら。
 でも、ネット販売では、どこも売り切れ状態で残念。
 ちなみに、和田農工具は、メガネ店も経営しておられるよう。多角経営ですな。。

・山谷産業(新潟県三条市)の「村の鍛冶屋 平型スノーダンプ」
 村の鍛冶屋鉄製で、幅530mm×奥行548mm 重量5.8kg。
 色も仕様も、ほぼ「和田式スノッパー」と同じ。
 少し重いけど、値段が安めだから、こっちを買っちゃう人が多いのかな。。
 ちなみに、山谷産業は、金物工業の盛んな三条市にあり、包丁から連結金具、漁業用具などを幅広く扱っておられ、ネットショップも充実。商売上手であります。
・浅香工業(大阪府堺市)の「金象印 スノーカート」
 金象スノーカートアルミ鉄製は6.0kg、アルミ製は4.3kg。
 いずれも、取っ手が溶接ではなくビス止めで、底面も丸いので、「屋根の重い雪を切る」用途向けにはベストではないかも。
 ちなみに、浅香工業は、寛文年間の創業で350年余の歴史を持ち、明治26年に我が国で初めてショベル、スコップを生産した会社なのだそう。
 象印のスコップはぼっちも愛用しておりマス。


・山田屋商店(新潟県十日町市)の「クマ武 スノーダンプ 屋根用」
 十日町で鉄工所を営んでいた樋熊氏が、工夫に工夫を重ねたモデル。
 樋熊氏が亡くなった後、山田屋商店がモデルを引き継ぎ、製造販売している。
 故人の名にちなみ、「クマ武」と名付けられた製品は、豪雪地帯十日町のトップブランド。
クマ武スノーダンプ屋根用 湿った重い雪向けに、「切れ味、雪さされ、雪はなれよし」。しかもステンレス製で長持ち。
 幅560mm×奥行565mm 重量4.7kg。
 うーむ、これはぼっちの理想に限りなく近いかも。
 ちなみに、山田屋商店も、ガソリンスタンドなどを多角経営しておられる。
 スタンドでも、クマ武は大活躍なんだろうな。。

以上、調査を進めていくうちに、スノーダンプの使い方にも、コツがあるのが分かってきた。
今までは、やみくもに力に任せて雪をすくっていたけれど、スノーダンプを手で持ち、ナイフみたいに、雪を適当なブロックに切ってからすくうのいいみたい。
最強の雪下ろし道具を使いこなす前に、まずスノーダンプ遣いの技能を磨かねばならないみたいでありマス。

| ぼっち | 山道具・小屋道具 | 00:07 | comments(0) | trackbacks(0) | にほんブログ村 アウトドアブログへ←アウトドアブログのランキングです クリックよろしく!
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>
+ SELECTED ENTRIES